就職活動や転職活動の面接では、次のような質問をされます。
- 強みを発揮した経験を教えてください
- 業務を改善した経験はありますか
- 困難な状況を乗り越えた経験はありますか
- 周囲を巻き込んだ経験はありますか
しかし、いざ聞かれると、すぐには答えられないことがあります。
特に、大きな成果を上げた経験や、面接で自信を持って語れる実績を探そうとすると、何も思い浮かばなくなる人もいるのではないでしょうか。
この記事では、面接で使えるエピソードが思いつかない人に向けて、AIに一問ずつ質問してもらい、日常の小さな記憶から経験を掘り起こす方法を紹介します。
最初から立派な実績を思い出す必要はありません。
仕事で感じた小さな違和感や、普段何気なく取っている行動をAIに深掘りしてもらうことで、自分では忘れていた、面接で語れる経験につながることがあります。
自己分析では、目立つエピソードばかり探そうとしてしまう
就職活動や転職活動のために自己分析をすると、どうしても目立つエピソードを探そうとしてしまいます。
大きな成果を上げた経験、リーダーを務めた経験、トラブルを解決した経験などです。
面接で具体的な経験を説明する必要がある以上、目立つエピソードを探すこと自体は間違いではありません。
ただし、最初から目立つ経験だけを探すと、自己分析がうまく進まないことがあります。
一つは、自分がすでに認識している強みに合う経験ばかり探してしまうことです。
「自分は責任感が強い」と思っていれば、責任感を示せそうな出来事ばかりを思い出そうとします。それ以外の特徴が表れている経験は、自己分析の材料から外れやすくなります。
もう一つは、偶然思い出せたエピソードに合うように、自分の個性を説明してしまうことです。
先に経験を思い出し、その経験を面接で使うために、
この経験から、私は○○な人間だと言えるのではないか
と、後から説明のロジックを組み立てます。
もちろん、それが本当に自分らしさを表している場合もあります。
しかし、手元にあるエピソードへ無理に自分の個性を合わせると、自己分析というよりも、面接用の物語を作る作業になってしまいます。
いきなり「大きな実績」を探すと、記憶が止まりやすい
面接で使える経験を探すとき、多くの人は次のように考えます。
業務を大きく改善したことはあっただろうか。
周囲に大きな影響を与えたことはあっただろうか。
しかし、質問が大きすぎると、該当しそうな経験がすぐには出てきません。
実際には、日常の中で工夫したり、問題を防いだり、周囲へ働きかけたりしていても、本人はそれを「大きな成果」として記憶していないことがあります。
そこで、いきなり実績を探すのではなく、もっと小さな記憶から始めます。
たとえば、次のような出来事です。
- 仕事中に少し不便だと感じたこと
- 周囲のやり方を見て、非効率だと思ったこと
- 誰も問題にしていないが、放置できなかったこと
- 次に使う人が困りそうだと感じたこと
- 言いにくかったが、伝える必要があると思ったこと
- 自分なりに少しだけ工夫したこと
一つひとつは、面接で話すほどの経験には見えないかもしれません。
しかし、そのとき何を考え、なぜ行動したのかを深掘りすると、自分の行動傾向が見えてきます。
その傾向を手掛かりに、同じ考え方がより強く表れた過去の経験を探すと、面接で語れるエピソードへたどり着きやすくなります。
AIには、分析より先にインタビューを頼む
AIを使った自己分析というと、
私の強みを分析してください
と依頼したくなります。
しかし、AIが分析できるのは、自分が伝えた情報です。
最初から自分でエピソードを選ぶと、自分がすでに持っている自己像や先入観が、材料選びに反映されます。
AIに渡す情報へ自分の先入観が入り込むと、もっともらしい回答が返ってきても、すでに持っている自己像を確認しているだけかもしれません。AI自己分析で「わかったつもり」になる危険性と、先入観を減らす方法は、こちらの記事で詳しく整理しています。
そこで、AIにはすぐに分析してもらうのではなく、記憶を引き出すインタビュアーになってもらいます。
AIに一問ずつ質問してもらう方法には、いくつか利点があります。
人に自己分析へ何時間も付き合ってもらうのは難しいですが、AIであれば、時間を気にせず対話を続けられます。
また、一つの回答から関連する質問を重ねたり、別の切り口から同じ経験を見直したりできます。
自分ではうまく説明できない感覚を、別の言葉で表現してくれることもあります。
重要なのは、最初から正しい分析結果を出してもらうことではありません。
自分だけでは思い出せなかった経験へたどり着くために、質問を重ねてもらうことです。
小さな出来事から、面接で語れる経験を探す流れ
AIとのインタビューは、次のような順番で進めます。
1.日常の小さな違和感を聞いてもらう
最初は、大きな成果ではなく、仕事中に気になったことを聞いてもらいます。
たとえば、
仕事中に「なぜ、こんな面倒なやり方をしているのだろう」と感じた場面はありますか。
という質問です。
この段階では、実際に改善できたかどうかは考えなくても構いません。
2.その後に取った行動を確認してもらう
小さな出来事が出てきたら、AIに次の行動を聞いてもらいます。
その状況に対して、自分から何か変えたことはありますか。
大規模な改善である必要はありません。
自分の担当範囲だけを変えた、資料を整理した、誰かに相談した、といった小さな行動も対象にします。
3.なぜ、その行動を選んだのかを深掘りする
次に重要なのが、行動の理由です。
なぜ、そのまま放置せずに行動したのですか。
なぜ、ほかの方法ではなく、その方法を選んだのですか。
同じ行動でも、理由によって表れる強みは異なります。
効率を高めたかったのか、誰かが困るのを防ぎたかったのか、事故を防ぎたかったのか、仕組みとして定着させたかったのか。
ここを深掘りすることで、表面的な行動の奥にある判断基準が見えてきます。
4.同じ考え方が表れた別の経験を探してもらう
行動傾向が見えてきたら、AIに別の経験を探してもらいます。
たとえば、
人に注意するより、自然に行動が変わる仕組みを作ろうとする傾向がありそうです。同じ考え方が表れた別の経験はありませんか。
という質問です。
小さな日常の行動から見つかった傾向を手掛かりにすることで、より説明しやすい過去の経験を思い出せることがあります。
5.質問の切り口を変えて、もう一度探す
一つの経験が見つかったら、同じ質問を繰り返すのではなく、切り口を変えます。
たとえば、
- 周囲が見過ごしていた問題に気づいた経験
- 言いにくいことを伝えた経験
- 誰かが困る前に行動した経験
- 自分の工夫が周囲に広がった経験
- 一度きりの対応ではなく、仕組みを変えた経験
などです。
切り口を変えると、自分では結びつけていなかった、別の強みを示す経験が出てくることがあります。
実際に、AIの質問から思い出せた経験
私は最初に、
非効率や無駄を放置できず、自分から改善した経験はありますか。
と聞かれましたが、面接で使えそうな経験をすぐには思い出せませんでした。
そこでAIから、仕事中に感じた小さな不便について聞かれ、共有フォルダやファイル名が分かりにくかった経験を話しました。
さらに、
- なぜ不便を放置しなかったのか
- なぜ周囲を説得するより、自分で小さく変えたのか
- そのとき、どのような考えで方法を選んだのか
と質問されました。
その結果、私には、
人に注意して行動を変えてもらうよりも、自然に望ましい行動を取りやすくなる仕組みを作りたい
という傾向があることが見えてきました。
そこでAIから、同じように、人へ注意するのではなく、仕組みを使って行動を変えた経験がないかを聞かれました。
その質問をきっかけに、共用の充電ケーブルを整理した出来事を思い出しました。
当時、共用のケーブルが乱雑な状態で返却され、次に使う人が不便になることがありました。
私は、きれいに束ねた状態の写真を掲示し、写真を見れば誰でも同じ状態に戻せるようにしました。
その結果、写真どおりに戻す運用が定着し、後には別の部署でも同じ方法が使われていました。
「業務改善の経験はありますか」と直接聞かれたときには、私はこの出来事を思い出せませんでした。
しかし、小さな不便への反応を深掘りし、そこから見えた行動傾向を手掛かりにしたことで、この経験へたどり着けました。
この経験は、面接では、
周囲へルールを押しつけるのではなく、誰でも自然に望ましい行動を取れるよう、分かりやすい仕組みを作った経験
として説明できます。
取り組み自体は小さくても、運用が定着し、ほかの部署にも広がったという結果があります。
単に「整理整頓が得意」と伝えるよりも、人の行動を仕組みで変える工夫ができるという強みを、具体的に示せるエピソードです。
質問の切り口を変えると、別の強みも見つかる
一つのエピソードが見つかった後、AIからの質問の切り口を変えました。
次に聞かれたのは、
周囲がまだ深刻に捉えていない問題に気づき、自分が動かなければ問題が残っていた経験はありますか。
という質問でした。
そこから、安全衛生委員をしていたときの、サービス残業に関する経験を思い出しました。
当時、一部の部署ではサービス残業が横行していました。ほぼ徹夜に近い時間まで働いているにもかかわらず、残業を申請していない人もちらほらいました。
私自身も時折サービス残業をしていたため、他人事ではありませんでした。それでも、より深刻な状況に置かれている人たちがいることを知り、見過ごすべきではないと考えました。
私は、安全衛生委員会という会社の公式な場で、この問題を取り上げました。
会社や担当部門を批判しているように受け取られる可能性があり、面倒な人だと思われる不安もありました。
それでも、周囲が言い出しにくい問題だからこそ、委員として発言する必要があると考えました。
また、問題を訴えるだけで終わらせず、
PCの使用ログと勤怠記録を突き合わせる仕組みにすべきだ
と、具体的な対策も提案しました。
その発言をきっかけに、未払い残業の調査と清算が行われました。
さらに、その後もPCの使用ログと勤怠記録を毎月照合する運用が、全社で継続されました。
この経験は、面接では、
周囲が言いにくい問題について、自分も当事者であることを認めたうえで、公式な場で発言し、再発防止につながる具体策を提案した経験
として説明できます。
ここからは、
- 言うべきことを、矢面に立って言える
- 問題を見つけるだけでなく、具体的な解決策を示せる
- 一度きりの対応ではなく、仕組みとして定着させることを重視する
といった強みを伝えられます。
「勇気があります」と自分で言うだけでは、面接官には伝わりにくいかもしれません。
しかし、周囲が言い出しにくい問題を公式な場で発言し、会社全体の運用変更につながった事実を示せば、必要な場面で責任を引き受けて発言できる人だと伝えやすくなります。
このように、最初の質問で見つかったエピソードとは異なる切り口から質問してもらうことで、別の強みを示す経験も掘り起こせます。
AIに頼む「5ターンのエピソード発掘インタビュー」
高度なプロンプトを作る必要はありません。
次の文章をAIへ伝えれば、同じようなインタビューを始められます。
就職活動や転職活動の面接で使えるエピソードを探しています。
いきなり大きな実績や成果を聞くのではなく、仕事や日常で感じた小さな違和感、困りごと、気になったことから、一問ずつ質問してください。私が答えたら、
・その後に取った行動
・その行動を選んだ理由
・周囲や仕事に起きた変化
を順番に深掘りしてください。行動の傾向が見えてきたら、同じ考え方がより強く表れた別の経験がないか質問してください。
5ターン程度質問した後で、面接で語れそうなエピソードが見つかったかを整理してください。最初から私の強みや性格を決めつけないでください。
一度インタビューが終わったら、次は切り口を変えます。
たとえば、
今度は「言いにくいことでも、必要だと考えて伝えた経験」という切り口で、もう5ターン質問してください。
と依頼します。
一度で完璧なエピソードを見つけようとせず、異なる切り口で数回インタビューしてもらう方が、自分では忘れていた経験を見つけやすくなります。
見つけたエピソードを、面接で使える形に整理する
エピソードが見つかったら、最後に次の四つを整理します。
- どのような状況だったか
- 何が問題だったか
- 自分がどのように考え、行動したか
- その結果、何が変わったか
さらに、次の点も確認します。
- その行動は、なぜ自分らしいと言えるのか
- ほかの経験にも、同じ傾向が表れていないか
- 応募先の仕事で、どのように生かせるのか
AIには、エピソードを過剰に立派に見せるのではなく、事実関係を保ったまま整理してもらいます。
AIが整理した内容に違和感がある場合は、無理に納得する必要はありません。ChatGPTの自己分析がしっくりこない理由と、その違和感を深掘りする方法も参考にしてください
成果の規模が小さくても、自分なりの判断や工夫があり、周囲や仕組みに変化が生じていれば、面接で語れる材料になります。
まとめ
面接で語れるエピソードが思いつかないからといって、語れる経験を持っていないとは限りません。
最初から「大きな成果」「業務改善」「リーダーシップ」といった言葉で探すと、かえって記憶が止まってしまうことがあります。
また、偶然思い出せた経験に合わせて自分の強みを説明すると、自己分析が後づけになりがちです。
そんなときは、AIに一問ずつ質問してもらい、日常の小さな違和感から始めてみてください。
何が気になったのか。
その後、何をしたのか。
なぜ、その行動を選んだのか。
同じ考え方が表れた別の経験はないか。
この順番で記憶をたどると、自分では忘れていた、面接で少し自信を持って語れる経験へたどり着けることがあります。
AIに自分の強みを決めてもらうのではなく、自分の中にすでにある経験を見つけてもらう。
それが、面接用のエピソードを探すときの、AIの使い方の一つです。
エピソードを探し続けて、自己分析をどこで終えればよいのか分からなくなった場合は、次の記事も参考にしてください。


コメント